『ノンケ上司、30日の開発メソッド』は、
ゲイの若手社員(攻)とノンケ上司(受)の一風変わった恋愛模様を描いた作品です。
現実離れした要素がありながらなぜか「リアル感」のあるシーンを生み出す七緒先生をお呼びして、
作品作りの秘訣や今作へのこだわりについてインタビューしました!
――今回のインタビュアーは担当編集のIです。
まずは七緒さんが漫画家を目指したきっかけについて教えてください。
正直「絶対に漫画家になりたい」と決意した瞬間は特別ないんです。
ただ絵は昔から好きで、気づいたら絵を描いていました。
小学校の頃に友達と交換日記で漫画のリレーをやっていて、
そのときに褒めてもらったり、続きが気になると言ってもらえたりしたのが
嬉しかったんだろうなと思います。
本格的に漫画をちゃんと描きたいなと思ったのは中学校に入ってからです。
漫画家さんがペンとかインクとかの道具を使っているのにあこがれて、
「これで描いてみたいな」と。
最初はつけペン(Gペン)を買いに行ったんですが、
すごい緊張して店員さんに「つけペンありますか」ってなかなか聞けなくて。
ついてきてもらった友達に「早く聞きなよ」って急かされました(笑)。
道具を買ってからは、自分の部屋にこもってずっと漫画を描いていました。
観ている映画を一時停止して、かっこいい俳優さんやかっこいいポーズを模写するとか。
この経験は今でも構図やポーズを決めるときに活きているのかなと思います。
実はいきなり漫画家になろうとしたわけではなくて、
ちょこっとだけデザイン関係の仕事をやっていたんですよ。
ただ、デザインがあまり得意ではなく、
「これじゃないな」「やっぱり漫画描きたいな」と思って。
なので、「絵で食べていけたらいいな」っていうふわっとしたものだけど、
ずっと漫画家になりたいという気持ちはあったのかなと。
そんなときにウェイブさんの作家募集ページを見て、勢いで「いっちゃえ! 」みたいな(笑)。
考えすぎちゃうと動けなくなるタイプなので、
ページ数の規定もなくて送りやすいのは本当にありがたかったです。
――ありがとうございます。
七緒さんの絵は映画を観ているようなシーンや凝っているポーズが多いなと感じていたんですが、
映画の模写で鍛えられたテクニックなんですね!
ちなみに、映画以外でなにか影響を受けたものはあるんでしょうか?
漫画でとくに影響を受けたのは、
羅川真里茂先生の『赤ちゃんと僕』と中村明日美子先生の『Jの総て』です。
『赤ちゃんと僕』は本当に大好きで、今でも年に何回か読み返したくなるくらい。
最初に読んだのは小学校の低~中学年ぐらいだと思うんですけど、
初めて模写したり真似して描いたりした漫画です。
主人公だけじゃなくて、友達とか脇役も名前を忘れないくらいかっこよかった。
脇役が脇役じゃないというか、
架空のキャラなのに本当に会った感覚になるくらい親しみが湧くというか。
自分もこんなキャラたちを生み出したいと感じた、理想の漫画です。
本当に素晴らしい、素晴らしい作品......ちょっとあとで読み返します(笑)。
『Jの総て』は、それまで持っていた漫画に対するイメージが変わるぐらい、衝撃を受けた作品です。
一本一本の線の綺麗さやワンシーンワンシーンの映画みたいな迫力に感動して、絵を真似ていました。
BLの世界観を感じる寄宿舎の雰囲気や題材もすごく素敵で。
『Jの総て』にあこがれて自分でも寄宿舎を舞台にした作品を描いてみたんですけど、
そういう作品を描くにはすごい勉強して設定を細かく作りこまないと難しくて。
当時は途中で描くのをやめちゃったんですけど、
金髪碧眼の美しいキャラとか、いつか描いてみたいですね。
また、作家さんでいえば浦沢直樹先生にも影響を強く受けました。
浦沢先生は本当にモブの描きわけ方がすごいんです...すごいとしか言いようがない(笑)。
羅川先生と明日美子先生もそうなんですが、
浦沢先生のように国籍や個性を絵で表現できると世界観が読者に伝わるというか。
あれを実現するにはとんでもない表現力と知識量が必要なんだろうなっていつも思っています。
私は大好きな漫画でさえ積んでしまっているのに、
いつ勉強されているんですかって......本当にびっくりします。
――脇役以外のキャラもきちんと作りこまれていて、
リアル感が生まれている漫画がお好きなんですね、ありがとうございます。
続いては今作についての質問です。
今作でお気に入りのキャラと、そのキャラを描くときに気を付けていることを教えてください。
お気に入りのキャラは攻の千皓くんです。
千皓くんは「こんな人いたらいいな」を詰め込んで作ったキャラクターだと思っていて。
ちょっとかっこいいけどときどき抜けているとか、
一見近寄りがたいけどしゃべったらちょっととぼけるとか。
なので、「絶対ストレートにイケメンになるなよ」って思いながら描いています。
外見はイケメンにしたいけど、中身はイケメンにしたくないみたいな(笑)。
ちょっと残念なイケメン、ちょっと毎回可哀想な目に合うっていうのがこだわっているポイントです。
ほかのキャラクターを描くときもそうなんですけど、
「そういう人が近くにいたら面白いなー」っていう感覚を大事にしています。
実際にいたらいいなとか、こんな上司だったらいいなとか、夢と希望を詰め込むつもりで。
あと、千皓くんも含めて「実際にいないけどどこかにいそうな感じ」を出せるように意識しています。
たとえば、ネームを描いていて「いや、こんな反応しなさそう」とか
「思ったよりリアクション大きかったな」とか感じたら軌道修正するとか。
ほかに工夫しているのは、
住んでいる部屋の間取りや最寄り駅までの道といった細かい設定を作ったり、
読者に身近なものを描いたりすることです。
そうすれば現実味がない話でも生活感や空気感が出て、
多少のリアルさを感じられるかなって。
――部屋の間取りや生活圏の設定は11月発売の単行本の特典ペーパーで見られるので、
ファンの方にはぜひチェックしてほしいですよね。
お気に入りのシーンや描いていて楽しいシーンはありますか?
第1話は楽しく描けたシーンが多くて、全ページ気に入っています(笑)。
幸介さんの抜けた感じとか、描いていてすごく楽しかった。
これまでの作品はシリアスな展開になりがちだったので、
こういうテンションの高い作品をあんまり描いたことがなかったんです。
それもあって、今作の1話はとにかく楽しくしようって思っていました。
ハイテンションなキャラクターを動かすのが新鮮だったのをよく覚えています。
あと、キャラクターが暴走しているシーンが好きなので、第4話の合コンの回もお気に入りです。
あの回は受けも攻めも「なぜ? 」ってシーンが続くじゃないですか(笑)。
一緒に合コンに参加した同僚の田中くんを含めて、すごく楽しく描いていました。
とくに田中くんは、今作の中で一番仲良くなれそうないいキャラクターに仕上がったので、描いてよかったです。
――ありがとうございます。
次は趣向を変えて、七緒さん自身への質問です。
ご趣味や仕事の合間の息抜きなどがあればぜひ教えてください!
飼っているポメラニアンのハナちゃんを愛でるのが息抜きになっています。
もう私の生活の8割ぐらいを占めていますね(笑)。
今作を描き始めるのと同じくらいに飼い始めたんですが、
目があった瞬間にすべての疲れが吹っ飛んでいく感じです。
つい触りたくなって席を離れるので、
そのときの座ったり立ったりが健康維持につながっているのかも。
あとは、旅行にはあんまり行かないんですけど、旅行雑誌を見るのが好きですね。
家具とか家の造りとかを見るのがすごく好きなので、
読んでいると「こんなところに住みたい」とか「これ欲しい」とかって思います。
資料として買ったのに普通に読んでしまって、「何探してたっけ? 」っていう(笑)。
――ハナちゃんは七緒さんのTwitterにもたびたび登場していますよね(笑)。
それでは最後に、読者さんに向けてメッセージをお願いします。
まず、今作を読んでくださっている方にはもう感謝の申し上げようもないくらい感謝しています。
本当にありがとうございます。
自分に至らないところが多くて、
今作を読み返すと「なんでここもっとこうしなかったんだ」と感じることも多いです。
でも、感想や応援のお手紙を送ってくださる方がいてくれて、
いつも「こんなに幸せでいいのかな」って本気で思っていて。
なので、そういう方が少しずつ増えていくように、
変わらず今後も頑張って描けたらと思います。
これからも今作を読んでいただけたら嬉しいです。
七緒先生、作品にリアル感を生み出す秘訣を
これでもかと語ってくださりありがとうございました!
2021年11月発売の単行本には、裏設定が書かれており
先生のこだわりを感じられる特典ペーパーがついています。
今作のファンはぜひチェックしてみてください!
☆作品はこちら↓
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