単行本も大好評発売中の『前略、お兄ちゃんは聖女になりました。』は、
純朴お人好しなお兄ちゃん聖女(!?)・梅彦と、
クセも魔力も強めな魔術師・テオの二人を描いた異世界BL作品です。
美麗な作画で読む人を魅了する由依子先生の気になる制作裏話が満載!
魔力供給もバッチリな大ボリュームのインタビューをお届けいたします♪
――今回のインタビュアーは編集担当のAです。
まずは、由依子先生の今までのご経歴を教えてください。
最初のデビューは8~9年前で、当時は少年誌でした。
それから7~8年間、少年漫画を描き、BLに転向したのはウェイブさんで描き始めた頃です。
――弊社での1本目の今作からクオリティが高く、BL第一作目とは思いもよりませんでした…!
本音ではずっとBLが描きたかったんですが、
専門学校卒業後に初めて描いて他社に持ち込んだBL漫画がボロクソに言われて(笑)
その後、少年漫画作品で賞をいただき、少年漫画の世界に入りましたが、
いつかBLを描きたいという想いがずっとあったので、
今こうして描けているのが本当に嬉しいです!
――単行本も発売しましたね。おめでとうございます!
単行本化決定時のお気持ちはいかがでしたか?
BL無名の新人作家の第一作目は、紙にはならないと思っていたので、本当にびっくりしました!
BLというジャンルでは、良い作品でも埋もれちゃう時があって、日の目を見づらい世界なのかな、と。
だからこそ、「お兄ちゃん」で「聖女」というパンチの利いたタイトルで良かったなと思っています!
――BLとファンタジーという組み合わせを描かれる上での、楽しさや苦しさなどありますか?
楽しさの方が多いですね。
現実世界ではあり得ないことも、「テオが魔術師だから!」で補完して読んで貰えるのが助かります。
男同士ならではの準備や後始末も、ファンタジー世界だと気にしなくていいじゃないですか(笑)
――テオは魔術師だけれど、自分で家事をする場面もありますね。
長生きなので、魔法は使い飽きているんだと思います。
自分の手でできることを自分の手でやる楽しさを感じているのかな、と。
けれど料理については…やっても上達しないことはしないんです!(笑)
――お気に入りのキャラや、キャラを描く上でのこだわりを教えてください。
お気に入りのキャラは、やっぱりテオですね。
こだわって描くところは、人物の瞳の中です。
好きな人を見ている時、人の目はキラキラするって聞いたことがあって。
人間の感情って瞳孔の大きさに出るらしいんです。
だから、怒っている時は瞳孔を狭く、安らいだり愛情を向けたりしている時は大きく描いています。
テオは目が小さくて、潰れてしまうような小さなこだわりなのですが…。
――梅彦の目も、10話の「よかった」がすごくいいですよね。
あそこは本当にお気に入りです!
見た人にほっとしてもらえるような表情が描きたくて。
成功できていたなら何より嬉しいです…!
――ぜひ、他のお気に入りのシーンもお伺いしたいです。
9話の、テオが抱きつくシーンです。
ここのテオの感情は、
子供が何か悪いことをした時の、親に向ける気持ちに近いかもしれません。
テオが顔を肩にうずめて隠すような状態のまま、離せないでいる感じとか…。
あとは2話の「触ってくれなきゃ爆発しちゃう!」ってところですね。
あれはもう、ネームの段階で自分でも何を描いているんだ!って思っていましたし、
さすがに担当編集さんにも止められそうだなと思っていたのですが、
何事もなく採用されて「やった…!」って思いました(笑)
あそこが私の中でもターニングポイントになった気がします。こんなにやっていいんだ!っていう。(笑)
――個人的に、先生が描くキュッと上がったお尻やモリッとした肩の筋肉がものすごく好きで。
脱衣しているエッチシーンが出てくるとガッツポーズしちゃいます!
脱衣しているエッチシーンを描くのは大変なんですけど、
でもやっぱり、心が通じ合ってくるにつれて脱いでいてほしい、みたいな願望があって。
なので、後半の方は二人とも全裸ですよね。
――読者の皆さんも気になっていると思うのですが、
先生の美麗な作画力はどう培われたものなのでしょうか?
正直に言うと、BLを描き始めるまでは天狗になっていたんです。
人体についての本も読んだことがあるし、まあまあ描けているだろうって調子に乗っていたのですが、
BLを描き始めて、「二人の男が全裸で絡むシーンを描くのって、こんなにも大変なんだ」って改めて思い知らされて。
天狗になっていた鼻はポッキリと折られましたね。
加えて、BLは画力の高い作家さんが多くて、人体の構造を熟知しているだけでなく、
皆さん自分の好きなポイントをしっかりと強調して描く個性もある。
これは必死こいて勉強をし直さないとダメだな、と。
美術解剖学の本を買って、筋肉を改めて1から勉強し直しました。
自分にはまだまだやることがたくさんあると分かって、ワクワクしています!
――やはり好きなポイントほど力が入るものでしょうか?
そうですね。私も胸筋とお尻を描く時は力が入ります。
お尻も、特にエッチシーンだと後ろに引いた時と挿れた時で筋肉の出方が違うので、
そこをマスターできればもっと上達できるなって思います。
毎回、原稿を描き終える時に「今回はここをマスターしよう!」と、勉強しながら作業していますね。
普通だったら原稿が終わってスキルアップして、次の原稿はもう少し早く終わるはずなのに、
私はスキルアップした分、次のやるべきことを詰め込もうとするので、どんどん効率が悪くなって…。
原稿が早くならなくて困っています(笑)
――確かに、先生が描くエッチシーンは手足がサボってないというか、妥協がないですよね。
あくまで自分の中ではですが、描けないから描かないでおこうというのが許せなくて。
バランスを取ろうと画面に映らないコマの外まで描いているから、更に時間がかかるんですよね。
――合間の息抜きの時間もないのでしょうか?
趣味をするまでの余裕はまだちょっとないのですが、部屋の掃除ができるくらいには(笑)
――以前、映画がご趣味とお伺いしましたが、やはり映画作品からも影響を受けますか?
10話の海の中でキスをする逆光のシーンや、9話目の体から吐息に似たモヤが出るシーンも、
映像美を感じました。
映画を観て色々と参考にはしていますね。
9話のアレは実は良いモヤが描けるペンを見つけたんですよ!
それで嬉しくなっちゃって、とにかくモヤを入れたかったんです(笑)
――少年漫画ご出身ということもあり、
先生の漫画は迫力を出したいところでしっかりと迫力が出ているのも魅力かなと思います。
迫力のある画面作りも、少年漫画を描いていた時に
担当編集さんからよく言われていた少年漫画のセオリーのひとつなので、
きっと今も頭に残っているんだと思います。
それがBL漫画で活きてきたなら良かったです。
――その他にも、由依子先生が描く女性キャラがとても魅力的で。
個人的には10話目で出てきた道具屋の女性が大好きです!
ありがとうございます!
あの女性は、最初は3話目で捕まっていた聖女の女の子たちの主人である魔術師にしようと考えていたキャラクターです。
私自身は百合作品も大好きなので、女性キャラで描きたい隠しエピソードも実はたくさんあります。
――それはぜひ読んでみたいです…!
キャラクターそれぞれに人間的な魅力がありますが、モデルがいたりするのでしょうか?
モデルになったキャラはいたりいなかったり、半々ですかね。
あとは過去のボツ作品のキャラだったりと、色んなところから引っ張り出してきています。
――その引き出しの多さはどういったご経験からくるものなのでしょうか?
これも少年漫画時代に鍛えられたスキルなのかもしれません。
少年漫画では、初めて見た瞬間に見分けがつくキャラクターデザインにしなきゃいけない!と、
とにかく分かりやすく描くのを大事にしていました。
――なるほど。ルカとジジのキャラデザをいただいた時も衝撃的でした。
私も、あのキャラデザが通った時はとても嬉しかったです!
荒々しい男に首輪をつけて従えている可愛い子っていうキャラクターをずっと描きたいと思っていて。
実現できて本当に嬉しいです。
――ここまで漫画のお話をたくさんお聞きしてきましたが、
もし漫画を描かない10連休があったら何をしますか?
『巨人族の花嫁』と『森のくまさん』と『魔王イブロギアに身を捧げよ』と…。
ウェイブさんのBLアニメを全部見ます!
――弊社の作品をたくさん挙げてくださって、ありがとうございます!(笑)
私は作業をしながらアニメを見るというのができなくて。
本当に見たい作品は、お菓子とコーヒーを用意して、ちゃんと腰を据えて見たいんですよね。
BL作品も映像でいっぱい出ているし…なので10連休あったらずっとそれを見続けます!
――では、もし異世界に飛ばされたら、どうしますか?
私、多分一週間くらいで死ぬと思います(笑)
BL漫画を描き始める前に、半年間くらい就職活動をした時期があったのですが、
良い歳をして経歴が全くない、本気で何もできない大人だったんですよ。
社会人になる上で、絵が描けることは全く役に立たないです!
なので異世界に行っても、一週間が限度だと思います(笑)
――最後に、読者の皆様へメッセージをお願いいたします!
読者の皆さんに楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
もし周りに筋肉好きのお友達がいたら、こっそりとオススメしておいてください(笑)
漫画制作に対する熱意を感じる、濃厚濃密なインタビューとなりました。
由依子先生、ありがとうございました!
同じく濃厚濃密なテオと梅彦の行く末にも、どうぞご期待ください♪
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