いち先生インタビュー『カラダが恋する契約結婚～冨永夫妻は今夜も離婚できません。』

『カラダが恋する契約結婚～冨永夫妻は今夜も離婚できません。』は、
カラダの相性が最高で、契約結婚生活を終了できなくなった2人を描いた作品です。
本来ドライな間柄ながらどんどん相手にハマっていく、
という複雑な関係性を魅力的に描かれているいち先生に、
今作のこだわりからプライベートのことまでお聞きしました！

――今回のインタビュアーは担当編集のHです。
まずは、漫画家になったきっかけをお聞かせいただけますか？

漫画家になった直接的なきっかけは、転職をしようと思ったことです。

もともと会社勤めをしていたものの、
子育てを含む家庭のことと両立できるような仕事に転職したいと考えるようになったんです。
そこで興味のあった漫画家やアシスタントの仕事をネットで探していたときに、
たまたま漫画家募集の広告バナーが目に入りました。
もし通ったらいいなと思いながら応募したら運よく編集部からお声がけいただけたので、今に至ります。

漫画家やアシスタントに興味があったのは、絵や漫画を描くのが好きだったからです。

私の母は絵を描くのがすごく上手で、小さい頃は一緒にお絵描きをしてよく遊んでいました。
母のようにうまくなりたくて毎日、毎日絵を描いていたら、絵を描くのが好きになったんです。

転職を決意するまでは絵で食べていくために一生懸命やっていたわけではなくて、
1年間だけ同人誌を出していたぐらい。
でも、漫画を描くのが楽しいなと思うようになったのは、母の影響が強いですね。

――絵を描きはじめたのはお母様の影響なんですね。
漫画制作を行ううえで影響を受けた作品はありますか？

漫画以外だと絵本やジブリ作品で、漫画では羅川真里茂先生の『赤ちゃんと僕』ですね。

実は私、漫画を読めるようになったのが小学校3年生ぐらいなんです。
それまで漫画の読み方がわからなかったんですよ。
漫画って四角（コマ）がたくさん並んでいて、
四角を単体で見たら画面に一人しかいなかったり、
言葉が一つだけしか入ってなかったりするので。

だから小さい頃は、ストーリーが挿絵と一緒に書いてある絵本や、
ジブリ作品のアニメに触れながら育ったんです。
とくに『魔女の宅急便』は「可愛いな」「絵がきれいだな」と感じてお気に入りだったので、ずっと観ていました。
なので、絵本やジブリ作品の影響は大きいですね。

漫画に関しては、『赤ちゃんと僕』に影響を受けていると思います。
はじめて自分のお金で買った作品なので、何回も読んだし、今でも大事に持っています。

――ありがとうございます。
いち先生の作品は「絵が華やかで綺麗」と読者さんから好評ですが、
作画で特にこだわっている部分はありますか？

どのコマにおいても自分が納得いくまで試行錯誤しているのがポイントでしょうか。

手抜きができないというと一生懸命すぎるように聞こえますが、
私はいい具合に力を抜くのが苦手なんです。
だから、描いたものを1個1個自分でチェックして、
変だなって思わなくなるレベルまで修正しています。

――確かに原稿を拝見していると、毎話どのコマもどのページも力を入れていただいてるなと感じます！
ちなみに、描いていて一番楽しい・好きだなと思うものはなんでしょうか？

本当に局所的な部分の話になるんですが、描いていて一番楽しいのは髪の毛です。
髪の毛を描くのが個人的にすごく好きで、作画前に髪型を考えるのも含めて本当に楽しいですね。
今作ではシーンごとに髪型を変えられるので、描きがいがあります。

あとは女の子の柔らかさを表現するのも好きです。
「どうやったらもっと柔らかい感じが出せるかな」「うるおいがありそうな肌に見せられるかな」と考えるのは、
大変だなと思うこともあるけど楽しくやれています。
だからこそ、せっかくの肉感を洋服で隠すのは、いつも「悔しいなぁ」と思っているんです(笑)。

――続いては今作についての質問です。
今作は「契約結婚」という特殊なテーマの作品ですが、描くうえで意識されてるポイントはありますか？

契約結婚という設定なので、「同棲」ではなく「同居」という感じを出すのがポイントです。
わざわざストーリーの中に組み込むことはありませんが、会話の流れや小物には気を遣っています。

たとえば、第1話にダイニングテーブルで主人公2人がご飯を食べるシーンがありますよね。
もし同棲・結婚しているなら、多分お互い向かい合って食べるのが多数派だと思うんです。
また、郵便物などを共通の場所に集めることも多いから、
テーブルの半分がそういうもので埋まっている様子も想像がつきますよね。

でも、あくまで同居なら、私物を共用スペースであるテーブルには置かないはず。
そして、隣でも向かいでもなく、斜め・対角線上に座っているんじゃないかなと。
ほかにも、契約だからお互いに熱くなりすぎないというか、
相手に対してドライでいようとするところもあると思います。

こういったところを意識して描いて、
読んでいる人が「ああ、同居なんだな」って感じる雰囲気を出せたらいいなと。

――いち先生の作品は、背景・小物を含めた雰囲気づくりが魅力的ですよね。
今作でお気に入りのシーンがあれば教えてください！

誰かにここ好きだっていってもらえたところは、大体好きになっちゃいます(笑)。
あえて挙げるなら第2話や第3話など、
打ち合わせで自分のアイデアにGOサインをもらえた話は気に入っていますね。

第2話では、暁仁に眼鏡をかけさせる案が採用されたので、3コマ目で実現させました。
また、第3話ではモブとして、私の過去作に出てくるカップルを登場させたんです。
「こんなこと言ってもいいのかな」と毎回思いながら提案しているんですが、
思うように描かせてもらって楽しかったです(笑)。

――読者さんにも、ぜひ配信中の第2・3話を実際にご覧いただきたいです！
続いて、ネタバレにならない範囲で、今後描いてみたいシチュエーションを教えてください。

私はエッチシーンの内容を考えるのが苦手だから、逆にすごくたくさん考えていて(笑)。
だから、エッチシーン絡みでは描きたいシチュエーションがいろいろたまっています。

たとえばこれまでなかったので、ヒロインから攻めるシチュエーションは描いてみたいですね。

あとは、髪の毛と服を描くのが好きなので、和服っぽい服装を描きたいです。
浴衣や着物などが出てくるような、画面が華やかになるシチュエーションを考えてみたいと思っています。

――次はプライベートについての質問です。
執筆に行き詰まることもあると思いますが、そんな時はどのように気分転換されていますか？

もうダメだと思ったときは、ヘアケア・ネイルケア・スキンケアでリフレッシュしています。

私は何を見てもすぐに仕事に繋げて考えてしまう癖ができてしまっているんですよね。
何かしらの作品を鑑賞すると作り手のことをすごく考えてしまうし、
歩いていて建物を見るとパース線が入ってしまうんです(笑)。
もう海くらいしか眺められるものがない状況になっているので、散歩もあまり気分転換にならなくて。
そうなったときにじゃあ何が出来るかって考えた結果、自分を大事にしてあげようと。

ほかには、最近ハマっている『マインクラフト』のゲーム実況動画を観ることもあります。
「今日はエリトラで旅をしています」といった内容の動画を15分間眺めると、気分転換になりますね。

――ありがとうございます。
いち先生の趣味についてもお聞きしたいです！

趣味はドライブと掃除洗濯です。

運転が大好きなので、連休が作れたときは遠くまでドライブすることがあります。
家が海岸線沿いにあるから、海に沿ってずっと西に行ったり東に行ったりして。
夜景を眺めたりアニソンを歌ったりしながらドライブを楽しんでいます(笑)。

掃除洗濯も趣味で、特に皿洗いが大好きです。
がっつり休むぞっていう時には換気扇や風呂場など、家の中を隅々までピカピカに掃除します。
執筆に行き詰ったときに汚れを見てしまうと掃除をはじめてしまうので、そうならないように(笑)。

――家事で息抜きされているのですね、私も見習いたいです！
それでは最後に読者さんにメッセージをお願いいたします！

読者さんには、伝わらないのがもどかしいぐらい感謝しています(笑)。
まず今作を読んでくれることが嬉しいし、感想をくださるのはより一層嬉しいです。
感想を送ろうって思ってくれるだけでも嬉しいのに、
実際に頭の中で文章を考えて、それを紙に書いて伝えようとしてくれる…もうその気持ちが本当にありがたくて。
でも私からお礼やお返しを出来ないので、すごくもどかしい。
できることなら目を合わせて手を握って、「ありがとう」って直接言いたいです(笑)。

いち先生、契約結婚という複雑な間柄を表現する秘訣やご自身のことについて、
たくさん質問に答えていだだきありがとうございました！
契約結婚と自分に言い聞かせつつもどんどん距離が縮まっていく主人公たちの様子から、
今後も目が離せませんね。

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